ドメスティック・バイオレンスとは
「ドメスティック・バイオレンス」(英: domestic violence、以下略称DVと記述)とは、同居関係にある配偶者や内縁関係の間で起こる家庭内暴力のことである。近年ではDVの概念は同居の有無を問わず、元夫婦や恋人など近親者間に起こる暴力全般を指す場合もある。 英語「domestic」は「家庭の」という意味なので日本語の「家庭内暴力」と同義に捉えようとする誤解も存在するが、英語では日本語の家庭内暴力にあたる語は family violence と表現され使い分けられている。英語ではDVは intimate partner violence (IPV)と同義に使われる。よってTVニュース等で「DV=夫婦間暴力」と説明することは間違いではない。[1]またこのため、児童虐待をDVに含めるのは間違いである。 |
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概要近親者に暴力的な扱いを行う行為・ないしは暴力によって支配する行為全般を、このように呼ぶが、ここでいう虐待には以下の種類がある。
一般的に暴力を好意的に受け止める人間は極めて限定的であるという考えから、DVの被害に対して別れればよい、付き合わなければよいという単純な解決法を提示する人もいるが、基本的にDVにおいて重要なのは単純な暴力行為だけではなく、暴力の合間に見せる僅かな見せ掛けの「優しさ」による被害者の加害者に対する信頼の再生産が重要であり、これが被害者と加害者のDV関係を修復・強化する重要な要素になる。DVの解決において加害者のみならず被害者にもカウンセリング等の対処が必要となる所以はこの点にある。 また、こうした暴力・虐待行為の現場に子供が居合わせることがある。子供に暴力を見せつけることも、被害者と子供双方に対する虐待である。子供のいる家庭で暴力事件が発生した場合、約七割の家庭で虐待を受ける父親または母親を子供が目撃し、さらに、その三割が、実際に父親または母親などからの暴力を受けていることが報告されている。 これら「近親者から受ける暴力」では、「夫婦喧嘩は犬も食わない」と言われ、警察は「民事の問題」として介入に消極的であった。しかし、法律の施行をきっかけに対応を変え、介入する動きも出てきた。 |
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相談件数等の状況「配偶者からの暴力事案の対応状況について」(警察庁)によれば、相談件数は以下のとおり。
2006年の内訳については
となっている。 ただしこの統計は相談件数を集計したものであり、同一人物による複数回の相談や、事実関係の検証がされていない事例も含んでいる。また、男性が被害者である場合の相談を受け付けていないとする指摘もある。 近年では裁判所による被害者の保護命令の発令も増加しているが、保護命令については、報復を恐れて申請しない被害者も多いといわれている。 |
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被害者の状況欧米ではこの30年、日本ではおおよそこの10年あまり、取り組みが積み重ねられ、その深刻な実態が明らかにされるようになった。 DVとは、もともと夫婦間における男性から女性への暴力を指して作られた概念であるが、後に概念が拡張され、女性から男性への暴力もDVと認識されるようになった。2005年度に行われた「男女間における暴力に関する調査」(内閣府)では
となっていた。 また、平成21年度に横浜市が行った「配偶者からの暴力に関する調査及び被害実態調査」によると、
とほぼ同率となっている。 被害内容については、
女性が加害者の場合は特に
また、「別居後も追跡をされた事がある」「(別居したことにより)収入が不安だ」なども報告されている[7]。 また、被害者数に地域差があり沖縄県などDVが多い地域もある |
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DVにみられる傾向男はこうあるべきだ、女はこうあるべきだという偏見を「性的役割」(または「ジェンダー・バイアス」)と呼称されるが、東京都の調査では、性的役割分業観に肯定的な人ほど異性への性的暴力や精神的暴力に対しても寛容であるという傾向を見出している。WHOの調査でも性的役割観とDV被害の相関が指摘されている。また、同調査では、加害者は被害者に対するコントロール傾向が強いことが指摘されている。また、加害者の多くは発達障害や自己愛性パーソナリティ障害がみられる |
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解決に向けた取り組み具体的な方策たとえ配偶者間や親子の双方、恋人同士であっても、外傷を負わせるほどの暴行(軽く蹴る、叩く、殴るフリ等も暴力)や精神疾患を患うほどの精神的苦痛(ストレスになることを継続的に行う)を加えた場合は当然暴行罪や傷害罪の対象となり、無理矢理性行為を強要すれば、強姦罪に該当しうる(鳥取地決1986年12月17日)。 しかしローマ法以来の家族観や、司法機関の介入により関係が破綻することへの危惧、犯罪性の認識の欠如などのため、「近親者からの暴力」について刑事介入がなされることは従来稀であった。また、離別しようとしても強引に連れ戻されるなどしてしまうことが多い、女性が被害者となった場合女性側の生活力が乏しいことが多い、近親者による暴力そのものが持つ依存的構造(共依存など)などのため、被害者が泣き寝入りする結果となってしまう傾向があった。 だが、徐々にDVを不法行為と認める裁判例が出始め、NPOなどによる被害者保護活動も活発化してきている。日本でも2001年10月より配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)が施行された。 また、加害者は何らかの精神疾患にあるとして、治療やカウンセリングの対象として捉えるアプローチも試みられている。 |
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日本以外の各国の状況アメリカ米国では1970年代後半から女性の権利闘争やいくつかの致死事件により、近親者からの暴力が耳目を集め、DVの概念がつくられた。 米国の家庭では暴力が深刻である。米国では15秒に1人、年間200万人以上の女性がDVの深刻な被害を受けておりDVによリ亡くなる女性が1日に11人である。 ヨーロッパ各国日本よりDVの発生件数が多い。ヨーロッパのDVは深刻で16歳から44歳までのヨーロッパ人女性の身体障害や死亡の原因が病気や事故を抜いてトップである(「アンリオン報告書」フランス保健省 2001年2月)。ポルトガルでは、50%前後の女性が、夫や同棲相手から暴力を受けたと述べている。こういった事態を受け対策が進められている。 ロシアロシアのDVは深刻である。ロシア内務省の報告では年間3万4千人以上の女性がDV被害に遭う。アムネスティ・インターナショナルによると、ロシアでは一時間に一人の女性が不自然な死に方をする。2009年にDV被害にあった子供は10万8千人であり、2,000人が死亡した。虐待から逃れて路上生活者となった子供は約10万人である。 イスラム圏保守的イスラームを奉ずる社会においても、他の伝統的・保守的社会同様DVは男性の権利として一定程度認められてきた。コーラン第4章34節には『アッラーはもともと男と(女)の間には優劣をおつけになったのだし、また(生活に必要な)金は男が出すのだから、この点で男の方が女の上に立つべきもの。だから貞淑な女は(男にたいして)ひたすら従順に、またアッラーが大切に守って下さる(夫婦間の)秘めごとを他人に知られぬようそっと守ることが肝要。反抗的になりそうな心配のある女はよく諭し、(それでも駄目なら)寝床に追いやって(懲らしめ)、それも効がない場合は打擲(ちょうちゃく)を加えるもよい。だが、それで言うこときくなら、それ以上のことをしようとしてはならぬ。アッラーはいと高く、いとも偉大におわします。』という文言があるためである。ドイツの判事がこれを理由にイスラーム教徒の夫が妻に暴力を振るったという訴えに対し無罪を言い渡し、問題になったこともある。当該事件は再審理された。 中国中華人民共和国では、2005年時点では約3割の家庭で夫婦間暴力が起こっているというそのうち、約7割は夫から妻に対するもので、残り3割は妻から夫に対して行われている。 要因としては、農村部では男尊女卑が指摘されている。また家庭内暴力は、女性が自殺する最大の原因となっている。 アフリカ諸国DVの発生件数が多いという指摘もあるが、実態はよくわかっていない。 韓国女性部と韓国保健社会研究院の調査では、全国9847世帯中、過去一年間に身体的暴力を受けたことがある者は11.6%に達した。また、暴言・脅迫・器物破壊は33.1%に達した。また、夫婦間の性的虐待の発生率は、2004年は7.1%であったが2007年は10.5%へ増加している。 2005年に行われた保健福祉省の調査では、外国人妻945人のうち14%の女性が韓国人の夫に殴られたと答えた |
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その他の問題
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